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今週のトピックス

95%以上が水という不思議な新素材

2010年03月01日    滝田よしひろ

原料のほとんどが なのに、しっかりした形を保ち、手でちぎれないほどの強さがあり、切ってもすぐにくっつければ元にもどる、そんな不思議な新素材 「アクアマテリアル」を、東京大学の相田卓三教授らのグループが開発しました。環境にもやさしい新素材 は、医療(いりょう)分野などでの利用が期待されています。

形も自由につくれ、曲げることもできる新素材「アクアマテリアル」
「アクアマテリアル」のつくり方 1. 工業用粘土(層状粘土鉱物)を水にまぜる。 2. 高分子化合物(ASAP ポリアクリル酸ナトリウム)を加えると、粘土がはがれて水のなかに広がる。 3. 高分子化合物(G3-Binder 両末端デンドロン化高分子)を加えてまぜると、すぐに3次元のあみ目構造がつくられ、そこに水分子がとらえられてゲルになる。

水からできた新素材「アクアマテリアル」

「アクア(aqua)」は「水 」、「マテリアル(material)」は「材料」を意味します。東京大学・大学院工学系研究科の相田卓三教授たちが開発した「アクアマテリアル」は、まさにその名の通り「水 」からできた新しい素材です。原料は、全体の95%以上(重さ )が 、ほかに化粧品などにも使われている工業用の粘土(層状粘土鉱物 〈そうじょうね んどこうぶつ〉)が2~5%、さらに約0.1%とごくわずかな高分子化合物 (たくさんの原子 が結合してできている物質、プラスチック や合成せんい、タンパク質 など身の回りにもたくさんあります)と呼ばれる物質が使われています。これらをまぜ合わせるだけで、水 はあっという間にかたまり、まるでグミキャンディのような、しなやかな手ざわりの「アクアマテリアル」ができあがります。

この新素材 は、ほとんどが水 からできているにも関わらず、しっかりした強度を持ち、ゴムのような弾力 性(だんりょくせい)もあり、しかも切った面をすぐに貼り合わせれば、もとどおりくっつくなど、すぐれた特徴(とくちょう)を持っています。さらに、水 はもちろん、工業用粘土なども自然にあるもので、捨てたあとも自然に分解 するなど、環境や人間の体によくない影響を与えにくい、環境にやさしい素材であることが分かっています。

「アクアマテリアル」を電子顕微鏡で見ると、細かいあみ目構造ができていることが分かる(100nmは10,000分の1mm)。

あみ目構造で水をキャッチ

「アクアマテリアル」のように、たくさんの水 を含みながらもしっかりとした形を保ち、くねくねと曲げ伸ばしすることもできる、こうした固体液体 の中間のような性質を持った物質は、「ゲル」と呼ばれています。生活の身近にも、コンニャクやトコロテン、ゼリーなど、ゲルの仲間はたくさんあります。

みなさんは、ジュースにゼラチンを加えて、火にかけて熱 し、さらに冷蔵庫で冷やしてゼリーをつくったことはありませんか。かたまってゼリーになる仕組みをかんたんに説明すると、ゼラチンに含まれるコラーゲンなどのタンパク質 が、熱 を加えることであみの目 のような構造をつくりながら広がり、そこにジュース(水 )の分子 がとらえられて動きにくくなり、かたまってプヨプヨとしたゼリーができあがるのです。

「アクアマテリアル」も同じような仕組みでできています。使われている工業用粘土は、雲 母(うんも)などと同じように薄いシート状の鉱物 が集まったもので、 に混ぜるとうすく小さくはがれて広がります。ここに特殊(とくしゅ)な高分子化合物 を加えると、それが粘土シートにくっつき、粘土同士をつなぐ働きをして、三次元のあみ目 構造ができあがります。そのあみ目 に水 分子 が引っかかってゲルになるのです。このときできるあみ目 構造は、コンニャクの500倍という非常に強い力 でくっついているため、かんたんにはちぎることができません。さらに、粘土の量をもっと増やせば、さらにかたい物質をつくることもできるそうです。

「分子のり」のイメージ図。黄色と緑色の部分が「アクアマテリアル」に応用された高分子化合物。この黄色部分がガラスや粘土にもくっつく性質を生かして新素材が開発された。

別の研究から誕生した新素材

「実は『アクアマテリアル』は、『分子 のり』という生体のタンパク質 などに強くくっつく高分子化合物 を開発するという、別の研究から生まれました」と相田教授はいいます。あるとき、開発した高分子化合物 がガラスによくくっつく性質を持っていることが分かり、「それならば、ガラスと同じ成分を持つほかのものにも貼りつくはずだ。これを応用すれば何か新しいものが生まれるかもしれない」、そうした発想から研究を進めて、誕生したのが「アクアマテリアル」でした。

相田教授は、「私は研究分野をひとつに決めてしまわず、いろいろなことをやるのが好きなのです(笑)。いつも好奇心(こうきしん)を大切にしながら、物質に関係することで、今までにない研究ができると思ったら、とにかくやってみる、それがモットーです」と話します。相田教授のもとで研究する学生たちにも、「自分と同じことをしないで、いろいろなことを学び、ひとつの分野をこわしていくことで、新しい可能性を広げなさい」と話しているといいます。

環境にもやさしく、原料をまぜるだけでかんたんにつくれるということもあって、相田先生の研究室には、「アクアマテリアル」の利用法について、医療関係をはじめ、おもちゃ業界やスポーツ業界など、いろいろな分野から問い合わせがあるそうです。「手術中にキズをふさいだり、人工関節 の材料に使う、さらにはこの素材で手術用の手袋をつくるなど、いろいろなアイデアがよせられています」と相田教授。水 からできた新素材 、どんな使い方があるか、みなさんも考えてみてください。


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