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世界で初めてウナギの完全養殖(ようしょく)に成功

2010年05月24日    滝田よしひろ

独立行政法人(どくりつぎょうせいほうじん)水 産総合(そうごう)研究センターは、実験室で生まれて親に成長させたウナギに を産ませ、これをふ化させて仔魚(しぎょ)と呼ばれる“赤ちゃんウナギ”を得ることに、世界で初めて成功しました。これにより、今まで難しかったウナギの完全養殖が可能になりました。

生まれたばかりのウナギの仔魚(受精から約30時間後)。写真提供:独立行政法人 水産総合研究センター(以下の写真、画像も含む)
養殖したウナギから次の世代を誕生させることができたことで、完全養殖が可能になった。

ようやく道が開けたウナギの完全養殖

「養殖」とは、人の手で管理(かんり)しながら、魚や貝などの 産生物を育てたり、増やしたりして収穫(しゅうかく)する方法のことです。自然の海や川にいる生物の数には限りがあるため、人間がたくさん獲(と)ってしまうと、数が減ってしまいます。そこで、牧場で牛を育てたり、畑に野菜を植えるのと同じように、水 産生物を人の手で育てる養殖技術が、海や川の生物資源(しげん)や環境(かんきょう)を守っていくために必要といわれています。ニジマスやマダイ、ブリ(ハマチ)、クルマエビなどは、すでに生物の一生をすべて管理できる完全養殖ができるようになっていますが、ウナギは、これまで海や川で稚魚(ちぎょ:シラス ウナギ)に育ったものを捕(とら)えて、それを大きく育てることしかできませんでした。

ふ化から4日目のウナギの仔魚。半年ほどでシラスウナギに成長する。

産総合研究センターの三重県・養殖研究所や鹿児島県・志布志(しぶし)栽培漁業(さいばいぎょぎょう)センターでは、これまでウナギを完全養殖するためのさまざまな方法を研究してきました。いちばん難しかったのは、人工的に育てたウナギに卵 を産ませて、ふ化させ、ウナギの赤ちゃんともいえる仔魚(プレレプトセファルス)を手に入れることでした。しかし、2010年3月 、実験室で卵 が産めるまでに育てたウナギの精液(せいえき)と卵 を使った人工授精(じゅせい)により、数十万個というたくさんの受精卵 を得ることができ、10万匹をこえる仔魚が生まれました。これによって、世界で初めてウナギの完全養殖を成功させることができました。つまり、天然(てんねん)のウナギに頼らなくても、人工的に育てたウナギに卵 を産ませ、それを育てる方法ができ上がったわけです。

長年、この研究に取り組んできた養殖研究所・生産技術部の繁殖 (はんしょく)研究グループ長・田中秀樹さんは、「完全養殖は成功しましたが、今後は、生まれた仔魚をできるだけたくさん、大きく育てていくための研究を続け、養殖技術を実用化させていかなければなりません」と話します。

マリアナ海域で行われたウナギの産卵海域調査の様子。ネットを使って成熟ウナギや仔魚を捕える。

生まれたばかりのウナギの仔魚は、現在、 が汚れないようにしっかりと管理された水 槽のなかで、サメの卵 などからつくった特別なエサを与えられて、少しずつ成長を続けています。そして秋ころには、体長50mmほどのシラス ウナギ(稚魚)になるそうです。

産卵海域調査で捕獲された卵を持ったメスのウナギ。

ナゾに包まれたウナギの生態(せいたい)

かば焼きなどにして食べるウナギは誰でも知っていますが、ウナギがどこで生まれ、成長するのかという生態については、まだはっきりと分かっていません。ウナギは川や沼などに棲(す)んでいますが、やがて成長すると川を下って海に出て、日本から約2,000kmも離れた太平洋のマリアナ海域という南の海で卵 を産むといわれています。2008、2009年に水 産総合研究センターは、水 産庁とともにこの海域で調査を行い、世界で初めて産卵 の準備ができた成熟(せいじゅく)したウナギを捕まえ、その近くで産卵 が行われることを確かめましたが、まだ詳しいことはナゾのままです。さらに、自然の海のなかで生まれたばかりのウナギが何を食べているのか、どうやって日本にたどり着き、川をのぼってくるのか、分からないことばかりです。

予想されるウナギの回遊(かいゆう)の様子。親ウナギは日本から約2,000km離れた海で産卵すると考えられている。

2009年の産卵 海域の調査に同行した田中さんは、ウナギが日本から遠く離れた海で卵 を産むことにあらためて驚いたそうです。「見たこともないような深海 魚がいるようなところで卵 を産み、生まれた子どもたちが、再び日本に帰ってくるなんて、本当にすごいことです。また、まだ分からないことがたくさんあるということもウナギの魅力 (みりょく)です。ナゾを解いていく面白さがあると思います」と話します。これからの調査によって、自然の海でウナギがどのように成長していくのかが明らかになれば、「それをウナギの養殖に活用して、よりよい養殖の方法を生み出していくこともできるはずです」と田中さんはいいます。


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