HOME > 読む > 科学ニュース
金星の謎を解き明かす「あかつき」
2010年06月21日 滝田よしひろ
2010年5月 21日、宇宙 航空研究開発機構(JAXA:ジャクサ)が開発した金星 探査 機(たんさき)「あかつき」を乗せたH-ⅡAロケット17号機が無事に打ち上げられ、地球の兄弟星といわれる金星 へ向けて旅立ちました。「あかつき」は半年後に金星 の上空に着き、そのまわりを周回しながら、2年以上かけてさまざまな観測を行う予定です。「あかつき」が調べる金星 とは、どんな星なのでしょうか。
![]() |
| 全球を覆(おお)う厚い雲を取り去った金星の地表の様子。提供:NASA、NSSDC |
地球の兄弟星・金星
金星 は、太陽 と月 を除けば、空に輝く星のなかで最も明るく見えます。みなさんも、夕方、西の空に輝く「一番星」、金星 を眺めたことがあるはずです。金星 は太陽 の周りを回る太陽系 の惑星 (わくせい)のひとつで、地球よりも太陽 の近くを回っているため、地球からは、いつも太陽 に近い位置に見えます。そのため、夜中には見ることができず、太陽 が沈んだ直後の夕方や、太陽 が登る前の明け方にだけ見られるのです。「明けの明星 」、「宵(よい)の明星」とも呼ばれています。また金星 は、ガリレオ が望遠鏡 で観察して、月 と同じように満ち欠けしていることを発見し、それが地動説 (ちどうせつ)の証拠(しょうこ)のひとつになったことでも知られています。
金星 は直径が約12,100kmと、大きさが地球(直径約12,800km)とほぼ同じで、地球と同じように岩石の地面を持つことなどから、金星 と地球は、同じころに同じようにして誕生した双子(ふたご)の兄弟星ではないかと考えられています。しかし、現在の姿や環境は地球と大きく異なっていることが分かっています。
例えば、金星 は地球などの多くの惑星 と自転 の向きが逆(東から西へ回転している)で、自転 の周期は243日と非常にゆっくりと回転しています。また、望遠鏡 で金星 を観察しても、表面の模様などははっきりと見えません。それは金星 全体が硫酸 (りゅうさん)や硫黄 (いおう)の厚い雲 で覆(おお)われているためです。そして、雲 がある高度約50~60kmあたりでは、秒速約100mというものすごい風が東から西へ吹いています(台風 の風速 は秒速約20m)。ちなみに、この全球を覆う厚い雲 が太陽 の光の約8割を反射 するため、金星 は明るく輝いて見えるのです。さらに、金星 の大気の約96%は二酸化炭素 です。大気の量が非常に多いため、地表面の気圧 はおよそ90気圧 もあります(地球は1気圧 、90気圧 は水 深900mの海のなかとほぼ同じ)。この二酸化炭素 の温室効果 (2010年6月 7日公開の科学ニュースで説明)によって、雲 に覆われて太陽 光があまり届かないにも関わらず、金星 の地表面の平均温度は約460℃にも達します。金星 には海はなく、その表面は、火山 から流れ出た溶岩 が固まってできた岩石の平原や山々が広がっていますが、そこはまさに高温・高圧の世界で、とても人間が降り立つことができないきびしい環境の荒野なのです。
金星の環境を調べる「あかつき」
1960~80年代、米国やソ連が次々に金星
に向けて探査
機を送り込みました。それによって金星
の表面の温度やく
わしい地形、大気の成分、風の強さなどが明らかにされてきました。しかしその後、金星
の探査
はほとんど行われてきませんでした。再び金星
に向けて探査
機が送られたのは、2005年に打ち上げられたヨーロッパ宇宙
機関の「ビーナス・エクスプレス」でした。この探査
機は2006年4月
に金星
の周回軌道に投入され、現在も金星
の大気の観測を続けています。これに続いて、今回打ち上げられたのが日本の金星
探査
機「あかつき」です。「あかつき」も、主に金星
の大気を調べるための探査
機です。「ビーナス・エクスプレス」が大気中にふくまれる化学物質の分布や化学反応
などを調べるのに対して、「あかつき」は、上空の速い風がどのようにしておきているのかなど、金星
の気象の研究に力
を入れています。そのため「あかつき」には、金星
の厚い雲
を通して雲
の動きや温度を調べたり、地表の様子まで調べることができる赤外線カメラや紫外線
カメラなどの観測機器が搭載(とうさい)されています。これらによって、ふつうは見ることができない雲
の下の気象を調べようというわけです。さらに、金星
でもカミナリが発生
しているのか、現在も活動している火山
があるかどうかなども調べる計画です。
およそ46億年前に、同じように誕生した双子の兄弟星である地球と金星
が、現在、どうしてこ
れほど違った環境を持つようになったのか、その運命を分けたものはいったい何だったのか、それを明らかにすることは、金星
そのものを理解するためだけでなく、地球の成り立ちを知り、これからの地球の環境を守っていくことにも役立つはずです。金星
探査
機「あかつき」は、まだ明らかにされていない金星
の謎をとくため、宇宙
空間を金星
に向かって飛び続けています。金星
に到達するのは、2010年12月
の予定です。



