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今週のトピックス

発信機(はっしんき)をつけてアライグマを追う

2010年08月09日    滝田よしひろ

もともと日本にいなかったアライグマがペットから野生化し、全国各地でいろいろな問題をおこしています。京都の環境保護(かんきょうほご)団体・関西野生生物研究所は、その行動を調べるため、6月 から京都・大阪で捕獲(ほかく)したアライグマに発信機をつけて追跡(ついせき)調査を行っています。

神社や寺院、住宅の屋根裏などに入り込むアライグマも増えている。画像提供:関西野生生物研究所

全国に広がるアライグマの被害(ひがい)

近年、ブラックバスやカミツキガメなど、外来生物(がいらいせいぶつ)がひきおこすさまざまな問題が、ニュースなどで大きく取り上げられています。外来生物とは、もともとその地域にいなかったのに、人間によって持ち込まれた生き物のことです。日本には、外来生物が2,000種類以上もいるといわれています。外来生物は、新しい環境で生きていけないことも多いのですが、なかには地域の自然にうまくなじんで、その数を増やし、問題をおこすものもいます。たとえば、ブラックバスなどは、もともとそこに棲(す)んでいた生き物(在来種〈ざいらいしゅ〉)を食べてしまい、絶滅 (ぜつめつ)に追い込んだり、生態系 (せいたいけい)のバランスをくずしてしまうことが問題になっています。また、畑の作物を食べてしまったり、人間にかみついたり、住宅に入り込むなど、私たちの生活に大きな被害をもたらす生き物もいます。アライグマも、まさにそうした困った外来生物のひとつとして、最近、注目 されるようになってきました。

アライグマは木登りが得意で、木に実るくだものなども荒らされてしまう(写真は飼育下のもの)。画像提供:関西野生生物研究所

アライグマは、もともとは北アメリカ大陸にくらす生き物でした。日本では、1960年代に愛知県の動物園から12頭が逃げ出し、野生化したのが最初といわれています。その後、1970年代後半にアライグマを題材にしたテレビアニメが放送されてからペットとして人気が高まり、1980年代からたくさん輸入(ゆにゅう)されるようになりました。しかしアライグマは、顔つきはかわいらしいものの、成長すると気性が荒くなることもあって、ペットとして飼い続けられなくなった人たちが、野山に放してしまったことなどから、各地で野生化が進み、その数を増やすようになったと考えられています。その結果、今では日本の全都道府県で、その存在が確認されるまでに生息 範囲(はんい)を広げています。そして、アライグマによる被害も数多く確認されるようになりました。例えば、アライグマは何でも食べる雑食性(ざっしょくせい)の生き物で、自然のなかでは、昆虫やザリガニ、魚、カエル、カメ、野鳥の などを食べてしまいます。そのため、里山 の生態系 に大きな影響が出ているといわれています。また、人里にあらわれて畑のトウモロコシやスイカ、ブドウなどの農作物、さらには養魚場(ようぎょじょう)の魚なども食べてしまい、大きな被害をもたらしています。さらに、最近では人家や寺社に入り込んで棲みついてしまうという被害も、数多く出ています。

2005年からアライグマの生態や行動を調べている京都の環境保護団体・関西野生生物研究所の代表・川道美枝子さんは、「日本にもともといなかったため、自然のなかにアライグマに対する対抗手段がありません。幕末にやってきた黒船のようなもので、日本には天敵 (てんてき)もおらず、アライグマの敵(てき)は、人間と自動車(交通事故)だけといってもいいほどです。家庭で飼われている犬などは、逆に噛(か)みつかれてしまいます。また、1、2カ月 何も食べなくても生きていられるほど環境の悪化にも強い。さらに木の上でも土のなかでも生活できるなど、適応力 にも優れています」と、アライグマがその生息 範囲を広げている理由を話します。

アライグマの行動をつかんで捕獲に役立てる

川道さんら関西野生生物研究所では、2010年6月 から京都府・大阪府で捕獲した10頭ほどのアライグマに電波 発信機をつけて、1年間ほどその行動を追う追跡調査 (テレメトリー調査)を始めています。こうした調査は、国内では北海道・東京・大阪などでいくつか行われていますが、京都を中心とした調査は初めてで、どこを巣やエサ場にしているのかなど、アライグマのくわしい行動を調べて、捕獲に役立てることをめざしています。

京都では、アライグマによって古いお寺や神社などの文化財も傷つけられている。画像提供: 関西野生生物研究所

「今年は捕獲頭数が少なく、まだ発信機を取り付けた頭数は少数ですが、40日間ほど追跡するなかで、行動の範囲が直径2~3km内であることや、いくつかある巣を2日おきくらいで転々と移動しながら行動していることなどが分かってきました。また、巣として人家、なかでも人が住まなくなった廃屋(はいおく)を多く利用していることなども見えてきました。京都は古いお寺や神社などの文化財が多く、こうした木造の建物が被害にあっていることが大きな問題であることは、これまでの調査でも明らかでした」と川道さんは話します。

2005年にアライグマは輸入や飼育・移動が禁止される特定外来生物に指定され、必要に応じて捕獲することもできるようになりました。現在、農作物への被害などを防ぐため、全国で年間1万頭以上が捕獲されています(2006年度)。「農作物や文化財などへの被害だけでなく、人家に棲みつくことで、人への感染症 (かんせんしょう)も心配されています。かわいそうだからと放置してしまえば、被害はどんどん増えます。その結果、殺処分などで奪われる命も増えます。今のうちに多く捕獲し、その数を減らすことが大事だと思います」と川道さんはいいます。

アライグマは、もちろん悪いことをしようとしているわけではありません。ただ必死に生きていこうとしているだけです。しかし、このままにしておくと、これまでの日本の自然がこわされてしまうなど、たいへんな問題が起きる可能性もあります。外来生物とどのように向き合っていくかは、とても難しい問題です。どうしていけばよいのか、みなさんも考えてみてください。


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