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「機械遺産(きかいいさん)」に選ばれた半世紀前の電気自動車

2010年08月23日    滝田よしひろ

日本機械学会は、日本の歴史に残るすぐれた機械技術を次世代に伝えていくことをめざして、「機械遺産」の認定を行っています。そして、2010年8月 、新たに6件の「機械遺産」が選ばれ、第二次世界大戦の直後に日本で開発された電気自動車 も、そのひとつとして認定されました

「機械遺産」に認定された、1947年完成の「たま電気自動車」。画像提供:日産自動車株式会社/社団法人 日本機械学会

便利で豊かな暮らしを支える機械技術

人間は道具を使うことによって暮らしを向上させ、さらに道具を高度に発展(はってん)させた機械や装置(そうち)をつくり出すことによって、より便利で豊かな生活を手に入れてきました。たとえば、自転 車や自動車、電車、船、飛行機といった乗り物は、歩くより何十倍も何百倍も速く、目 的地へ私たちを連れて行ってくれます。また、工場にある工業用ロボット は、私たちが手作業で行うより短時間で正確にものをつくり出します。さらに、コンピュータ は人間がやると何十年、何百年かかるような計算をあっという間に処理してくれます。機械とは何かを説明するのは簡単ではありませんが、ひとことでいえば、人間の限界(物理的、時間的、化学的などさまざまな意味での限界)を超えてその活動を拡大し、人間のさまざまな夢を実現するために役立つシステムといえるでしょう。

人間はこれまでたくさんの機械をつくり出してきました。日本機械学会は、そうした機械技術のなかから、機械の発展の歴史において重要な成果をもたらしたものや、国民生活・文化・経済・社会などに大きく貢献したものを選んで「機械遺産」に認定し、歴史に残る重要な機械技術を大切に保存し、文化的な遺産として次世代に伝えていこうとしています。

「機械遺産」の認定は、日本機械学会の創立110周年の記念事業として2005年から検討(けん とう)が始まり、2007年から毎年認定が行われています。2009年までに37件が認定されました。これまでに認定されたものには、江戸時代につくられた機械式和時計をはじめ、明治時代の工作機械や工場の発電用蒸気タービン、札幌市時計台の時計装置、現存する最古の国産機械式計算機「自働算盤(じどうそろばん)」(1902年に発明された)、大正時代の「円太郎(えんたろう)バス」(米国フォード社の貨物自動車をバスに改良したもの)、さらには、戦後初めて日本で開発された旅客機(りょかくき)YS11や東海道新幹線0系電動客車など、幅広い分野のさまざまな機械があります。

100年を経た今も人々に親しまれている回転木馬「カルーセル エルドラド」。画像提供: 株式会社豊島園/社団法人 日本機械学会

50年以上前の電気自動車も認定

2010年8月 に、新たに6件が「機械遺産」の認定を受けました。国産第1号のフォークリフトや日本が世界で初めて実用化した自動改札機などとともに認定されたもののなかには、日本に残る遊戯(ゆうぎ)機械の中で最古(世界でも最も古いもののひとつといわれています)のメリーゴーランド(回転木馬)である「カルーセル・エルドラド」(東京・としまえん)も含まれています。1907年(日本の明治時代末)にドイツの技術者によってつくられた「カルーセル・エルドラド」は、当時の機械技術と美術工芸技術のすべてが投入された傑作(けっさく)で、ヨーロッパのカーニバルなどを巡業(じゅんぎょう)した後、1911年には米国東海岸の遊園地・コニー・アイランドに設置されました。そして、1964年に日本に渡り、原形どおりに修理されて、1971年から「としまえん」のアトラクションとして復活しました。「カルーセル・エルドラド」は、誕生してから100年を超えた現在も、子どもたちに愛されて立派に動き続けています。

2010年に認定された「機械遺産」のなかで、もうひとつ注 されているのが、第二次世界大戦が終わった直後の1947年に完成した「たま電気自動車 」です。戦時中に飛行機をつくっていた立川飛行機の技術者たちが集まって、東京電気自動車 という会社をおこし、この電気自動車 が開発されました。そのころは自動車の燃料となるガソリン の供給が制限されていたことから、あまっていた電力 を利用しようとして電気自動車 が生まれました。そして、この時代に開発された電気自動車 のなかでひじょうにすぐれた性能を持ち、高く評価(ひようか)されたのが「たま電気自動車 」でした。車体に載(の)せられたモーター は36ボルト 、120アンペア 、バッテリー(鉛 蓄電池 )の重さ だけで300kg以上ありましたが、最高時速35キロ、1回の充電で65km走ることができました。この「たま電気自動車 」は、1950年代に入ってガソリン の供給(きょうきゅう)が安定するまでのわずかな期間でしたが、実際にタクシーやトラックとして東京の街を走っていました。

今日、環境の問題から再び電気自動車 が注目 され、電気自動車 が一般に販売される動きも出始めています。電気自動車 の技術が、今また見なおされようとしているのです。「たま電気自動車 」は、すぐれた技術も社会的な状況によって受け入れられないことがあること、また一度は消えてしまった技術も、人々の考え方や社会の変化に応じて、再び見直されることがあるなど、世の中の変化と機械技術の関係を考えていく上で重要なことを物語っていると日本機械学会は考え、この50年前に開発された電気自動車 を「機械遺産」のひとつに認定することを決めたそうです。当時つくられた「たま電気自動車 」の1台が、現在も走行できるように整備されて、日産グローバル本社(横浜)のギャラリーに展示されています。

●社団法人 日本機械学会 機械遺産HP:
http://www.jsme.or.jp/kikaiisan/index.html/

●日産 グローバル本社ギャラリー:
http://www.nissan.co.jp/GALLERY/HQ/


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