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世界自然遺産(いさん)に決まった小笠原諸島

2011年07月25日    滝田よしひろ

2011年6月 24日、フランス・パリで開かれたユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産委員会において、日本の小笠原諸島(東京都)が世界自然遺産として登録(とうろく)されることが決まりました。日本では、1993年に白神山地(青森県・秋田県)と屋久島(鹿児島県)が、2005年には知床(北海道)が世界自然遺産として登録されており、小笠原諸島は4件目 の登録となります。

世界自然遺産に登録された小笠原諸島(母島) 画像提供/小笠原村
クロアシアホウドリ。小笠原は世界的にも絶滅が心配されているアホウドリ類の貴重な生息地のひとつ。 画像提供/環境省

貴重な自然は次世代に残すべき大切な宝物

地球上には、すばらしい自然や美しい景観、人類が築いてきたすぐれた遺跡(いせき)や建築物が数多くあります。これらは何もしないで放置されておいたり、開発が進んだりすると、壊されたり、そこにしかいない生き物が絶滅 してしまう危険もあります。「世界遺産」は、そんなことがないように、貴重な自然や文化財(ざい)をみんなで守り、次の世代に引き継いでいくことを目 的に、ユネスコに登録されるものです。したがって、世界遺産として認められるためには、ただ高い価値を持つだけでなく、それらを将来に残していくために、しっかりとした管理や保護活動の実施も求められています。

山の斜面に広がる乾性低木林は小笠原を代表する森林。固有種も多い。 画像提供/小笠原村

世界遺産には、すぐれた価値を持つ建築物や遺跡、文化的景観を対象とする「文化遺産」、すぐれた価値を持つ地形や自然の風景、貴重な動植物の生息 地を対象とする「自然遺産」、両方のすぐれた価値を持つものを対象とする「複合(ふくごう)遺産」があります。1978年にガラパゴス諸島 (エクアドル)など12件(自然遺産4件、文化遺産8件)が初めて登録されて以来、2010年までに911件(自然遺産180件、文化遺産704件、複合遺産27件)が登録され、今年6月 に開催されたユネスコの第35回世界遺産委員会において、新たに25件(自然遺産3件、文化遺産21件、複合遺産1件)の登録が決定しました。そして、その中には日本の小笠原諸島(東京都)が自然遺産に、中尊寺などで知られる平泉(岩手県)が文化遺産にふくまれていました。

マルハチは小笠原固有の木生シダ。 画像提供/環境省

小笠原諸島の貴重な自然

自然遺産に登録された小笠原諸島は、東京都心から南に約1,000km離れた太平洋上に点在する大小約30の島々です。東京から船で25時間以上かかる亜熱 帯気候の島々(年平均気温 は23℃)は、これまで大陸と陸続きになったことがないため、動植物は独自に進化 し、ここだけにしかいない固有の生き物も数多くいます。そんな海洋島の独特の生態系 や生物進化 は世界的にも珍しく、その高い価値が認められて、自然遺産登録につながりました。

絶滅が心配されているオガサワラオオコウモリ。花の蜜や果実を食べる。 画像提供/環境省

今回、自然遺産に登録された区域は、自衛隊の基地がある硫黄 島や父島・母島の集落地などを除いた島々と一部の海域が含まれています。小笠原諸島の島々は、太平洋プレート とフィリピン海プレート がぶつかり合う、プレート 沈み込み帯という場所でおきる火山 活動によって誕生しました。島の地形にも、その特徴がはっきり残っています。このため、陸上の生物は、海流や風に流されたり、流木とともに漂着したり、鳥などに運ばれるなどしてたまたまたどり着き、島の環境に適応して生き残ったものが、独自の進化 をとげてきました。この島々にしかいない固有種が多いのもそのためです。めずらしい生き物が多く生息 していることから、小笠原諸島は「東洋のガラパゴス」とも呼ばれています。

小笠原の固有種、アカガシラカラスバト。生息数は数十羽といわれている。 画像提供/環境省

父島や兄島には、乾性低木林(かんせいていぼくりん)と呼ばれる背の低い(約5~8m)樹々からなる森林が広がっています。ここには乾燥した気候に合わせて進化 した固有の植物が茂っています。動物でも、ほ乳類のオガサワラオオコウモリ、は虫類のオガサワラヤモリ、オガサワラトカゲなど、鳥類 のメグロ、アカガシラカラスバトなど、固有の動物が数多くいます。さらに、独自の種分化をとげて、数多くの固有種がいることで知られるのがカタツムリ類です。約100種のカタツムリ類のうち9割以上が固有種です。

小さな島々に多くの固有の生き物が生息 ・生育し、生物学的にも非常に貴重な小笠原諸島の自然ですが、そのなかには絶滅 のおそれがある種も数多くいます。オガサワラオオコウモリの生息 数はわずか数百匹、アカガシタカラスバトは数十羽ほどしかいないともいわれています。

オトメカタマイマイ。小笠原には独自の進化を遂げたカタツムリ類が数多くいる。 画像提供/環境省

こうした危機の大きな原因となっているのが、かつて無人島だった島々に入り込んだ人間によって持ち込まれたさまざまな動植物の影響です。野生化したヤギによって貴重な植物が食べられてしまったり、大量に増えた米国原産のトカゲによって昆虫が食べられたり、他にも野生化したネコやブタ、ウシガエルなどさまざまな外来種 によって小笠原にしかない生態系 が少しずつこわされ続けています。父島では、カタツムリ類の天敵 であるウズムシ類が侵入して被害が出ているそうです。

野生のネコやヤギからアカガシラカラスバトの生息地を守るために設置された侵入防止柵の看板。 画像提供/環境省

小笠原では、こうした外来種 の被害をなくすために、外来種 の捕獲(ほかく)や侵入防止柵(さく)の設置などを進めてきましたが、今回、世界自然遺産に登録されたことによって、今後、観光客など島々を訪れる人々が増えることも予想され、環境の悪化とともに、新たな外来種 の侵入が心配されています。


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