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生物界最強!? 7万5000気圧にも耐えるクマムシ
2007年08月06日 橘悠紀(科学ライター)
低温や高温、乾燥など、厳しい環境にも耐えることで知られるクマムシ。このほど、7万5000気圧 という超高圧にも耐えることが確かめられました。
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| テフロンカプセルに入れたクマムシ。装置から取り出してすぐの様子。|画像提供:岡山大学大学院自然科学研究科 小野文久 |
驚異の耐圧性を持つクマムシ
岡山大学大学院の研究チームは、体長1mm以下の小さな生物・クマムシが、地下180kmでの圧力 にあたる7万5000気圧 にも耐えることを確認しました。最高8万気圧 を発生 させる装置に20匹のオニクマムシを入れ、7万5000気圧 の圧力 を3時間加える実験をしたところ、20匹すべてが生きていたのです。私たちが暮す地上は、1気圧 、つまり1cm2あたり約1kgの重さ がかかっていますが、7万5000気圧 というと、指先(1×1cm)に75トンもの重さ がかかる計算になります。これまでも、クマムシは、-250℃の極寒や150℃の高温、紫外線 や放射線 下などの極限の環境にも耐えられることがわかっていましたが、今回の実験によって、想像 を絶する超高圧下でも生きていられることが明らかにされたのです。
復活のカギは乾燥状態
クマムシは、クモなどの節足動物
と、ミミズなどの環形動物の中間的な特徴を持つ緩歩(かんぽ)動物で、これまでに約750種類が確認されています。左右4対の足を持ち、姿がクマに似ていることからクマムシの名で呼ばれます。生息
域は広く、湿ったコケや森林の落葉
土のなかから、湖沼、海洋まであらゆる場所にいます。
ふだんは気づかない小さな生き物ですが、厳しい環境でも生きていけることで知られています。クマムシは、周辺の水
分がなくなると、体を縮めてボールのような形になり、体内のほとんどの水
分を放出します。このとき体内に、トレハロースという保水
性の高い物質をつくり、また周辺に水
分がもどるときに備えます。この「たる(樽)」と呼ばれる乾燥状態になると、クマムシは、-250℃~150℃の温度変化や真空状態、紫外線
や人間の致死量の10000倍の放射線
、高圧下などの極限環境にも耐えられるのです。そして、数年間この状態が続いても、雨
などで水
を得ると再びもとの状態になって活動できます。
岡山大学大学院の研究チームの小野文久教授は、本来、超高圧下での金属
や合金
の性質の研究者ですが、今回の実験に取り組んだきっかけを次のように語ります。「研究設備に最高8万気圧
を発生
させる装置がありました。試料を入れるテフロン
カプセルを見て、もしこのなかに生物を入れることができたら、超高圧でも生き残れる生物を探すことができるのではないかと考え、生物の研究者、三枝誠行准教授らとの共同研究を始めました」。
研究チームは、乾燥状態になったオニクマムシ20匹のグループを4つつくり、内径1.6mm×長さ1.8mmのテフロン
カプセルに入れ、7万5000気圧
を加えました。「バクテリアなどは、3000気圧
で死滅してしまいますが、クマムシはこれまでにも6000気圧
に耐えたという実験報告がありました。しかし、その10倍以上の圧力
をかけるのですから、当然すべてが死滅すると思っていました。」(小野教授)。ところが、最初のグループは、20分間圧力
をかけた後、水
をかけたところ、ピンセットで傷つけた2匹以外は、生きていたのです。別のグループで3時間、6時間と加圧時間を延ばして実験しても20匹すべてが生きていることが確認されました。さらに加圧時間を12時間まで延ばしても5匹が生きており、クマムシが最高で13時間まで耐えうることがわかったのです。 宇宙
開発をはじめ深海
探査
や地下深部探査
など、私たちが暮す環境とまったく異なる極限環境の調査や研究が進められる一方で、ネムリユスリカの「休眠
幼虫
」、ミジンコなどの「休眠
卵
」、そしてクマムシの「たる」のように、極限環境への耐性を獲得した生物についての研究も盛んに行われるようになりました。小野教授は「クマムシが極限環境に耐えるメカニズムや、その能力
を会得した起源などは、まだよくわかっていません。しかし、通常の状態だと、簡単につぶれて死んでしまうのに、乾燥状態になるとこれほどの耐性を持つことは、本当に不思議です」と語ります。生命の謎を解き明かす研究は、まだ始まったばかりです。
●もっと知りたい人へ
小野文久研究室 http://www.physics.okayama-u.ac.jp/ono_homepage/index-j.files/frame.htm
クマムシゲノム
プロジェクト http://kumamushi.org/
『クマムシ!? 小さな怪物』(鈴木 忠著 岩波
科学ライブラリー)



