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通信ケーブルに産卵するクマゼミ

2007年08月27日    橘悠紀(科学ライター)

西日本に多く生息 しているクマゼミが、インターネット光ファイバー ケーブル(家庭や会社などへの引きこみ線)に穴を開けて産卵 し、通信に障害が出る事故がおきています。通信事業社では、こうした事故を防ぐため、ケーブルの改良に取り組んでいます。

光ケーブルに産卵するクマゼミ。|資料提供:NTT西日本株式会社

光ケーブルに穴を開けた犯人はクマゼミ

2002年ごろから、西日本の各地で光ファイバー ケーブルに穴が開けられて、光ファイバー が傷つき、通信が途切れたりする事故がおきていました。通信事業社のNTT西日本が調査したところ、穴の大きさや角度・深さなどから、この穴がクマゼミの産卵 管による刺し傷であることがわかりました。本来枯れ枝などに産卵 するクマゼミが、ケーブルに産卵 していたのです。被害は、年間で約1,000件にも達し、同社でも悩みの種になっています。

ケーブル改良の移り変わり。ノッチとは「みぞ」のこと。テンションメンバとは強度補強のために入れられた鋼線のこと。|資料提供:NTT西日本株式会社

ケーブルを改良して対抗

光ファイバー は、直径約0.25mmのガラス線で、画 や音声などの情報の通り道です。それだけでは強度が低いため、鋼線で補強し、ポリエチレン の被膜でおおわれています。クマゼミがこのポリエチレン を突き刺して産卵 し、内部の光ケーブルを傷つけていたのです。

セミの生態や習性に詳しい日本セミの会の税所康正さんによると、「クマゼミのメスの産 管は枯れた木を通すほどかたく、ポリエチレン に穴を開けるくらいは簡単なことなのでしょう」とのこと。

クマゼミは、全長60~70mm、日本に生息 しているなかでも大型のセミです。雌の産卵 管は、太さ約1mm、長さ約1cmですが、先端にギザギザの突起があり、枯れ枝の表面をめくってしまうほど鋭いものです。クマゼミは、1つの穴に複数の を産み、少し移動してさらに卵 を産みつけます。卵 は枝のなかで冬をこし、翌年の初夏にふ化します。ふ化した幼虫 は土にもぐり、その後6〜7年間を土のなかで過ごします。

事故が明らかになったころの光ケーブルは、作業をしやすくするため表面にV字型のみぞがありました。光ファイバー は、このみぞの真下にあるため、クマゼミがみぞに穴を開けると、高い確率で光ファイバー が傷ついていたのです。そこで、NTT西日本では、みぞのないケーブルに改良さらに、光ファイバー をプラスチック 素材の防護壁ではさむことにしました。また、クマゼミは、冬に凍結するおそれのある生木には産卵 しないことから、光ファイバー ケーブルのメーカーは、被膜を生木の感触に近い材質に変えたケーブルを開発しています。

カラスが送電鉄 塔に巣をつくり、停電の原因になるなど、生き物の活動が人間の生活に被害を与えることは、ときおり見られます。逆に、人間の活動も野生の生き物に影響を与えています。今回のトラブルは、人間と生き物が共存していくには、さまざまな配慮が必要であることを私たちに語りかけています。

●もっと知りたい人へ
セミの家 http://homepage2.nifty.com/saisho/Zikade.html


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