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今週のトピックス

自然とふれあうひととき

2008年02月20日    土佐幸子(ボストン科学博物館講師)

米国ボストン近郊に暮らし、ボストン科学博物館で子どものための科学教室講師を務める土佐幸子さんに、米国の科学事情や、子どもたちと科学教育をめぐる楽しいお話を綴っていただきます。

英語版もあるのでぜひ読んでください。 http://www.kagakunavi.jp/topic/show/83

ろうそくを型から出そうとする先生の手元を、真剣に見る子どもたち。自分たちのろうそくも、だいぶ太くなってきました。
大きな暖炉の周りに集まって、先生の話を聞く。

大雪が降って学校が休みになったり、零下の気温が続いたり、ボストン近郊は冬のさなかです。

大雪 が降って学校が休みになったり、零下の気温 が続いたり、ボストン近郊は冬のさなかです。でも、子どもたちのエネルギー に季節は関係ありません。ボストン郊外のリン カーン市にあるドラムリン ・ファームでも、子どもたちが冬の活動を楽しんでいました。ドラムリン ・ファーム(正式には「マサチューセッツ・オーデュボン協会管轄ドラムリン ・ファーム野生保護地域」)は、文字通りの農場で、牛や馬、羊などの家畜を飼って、子どもたちに自然や環境保護について教える教室を開いています。また、230エーカー(約92ヘクタール)におよぶ自然林の敷地は、州の大事な野生動植物保護地域の一つとなっています。

馬の毛にブラシをかける子どもたち。

この日開かれたのは、この地方の冬の生活や自然を学ぶ親子教室「暖炉を囲んで」というプログラムです。パチパチと火の粉を飛ばして燃える大きな暖炉には、人と人とを近づける働きがあるのでしょうか。寒い日の午後を有意義に過ごそうと、家族が次々と姿を見せました。集まったのは、3歳から10歳までの子どもを連れた7家族です。まず、防寒のしたくをして、家畜のいる納屋に移動です。納屋に入ったとたん、動物と干し草の匂いに包まれました。人の姿を見たミュール(ウマとロバとの間に生まれたラバのこと)が、柵を足で蹴って餌を催促します。牛も 息を白く曇らせて、声をあげます。子どもたちは2人の先生の指示に従って、馬の毛にブラシをかけたり、干し草を運んでそれぞれの動物にあげたりと、動物とのふれあいをゆったりとしたテンポで進めました。都会の生活に慣れた人間にとって、動物の“におい”はちょっと抵抗 があるものです。いきなり身体中に浴びると、面くらいます。でも、安心できる匂いです。人工的ではありません。何か、私たちの本能に働きかけるものがあるような気がしました。匂いを嫌がる子どもは一人もいませんでした。

暖かい暖炉の部屋に戻ると、今度はろうそくづくりです。この地方で昔から行われてきた、芯をろうに浸す方法でつくります。テーブルに融けたろうを入れた缶2つが用意されました。子どもも大人も芯になる糸をもらい、テーブルの周りを列になって動きながら、糸を浸しては乾かし、乾かしては浸しという作業を繰り返します。20周ぐらいしたでしょうか。ろうそくはだいぶ太ってきました。作業の合間に、先生は型に流し込んだろうそくを、 い湯に浸して取り出そうとしています(写真1)。作業に少し飽きてきた幼児には、うれしい寄り道です。もう一人の先生は、パン切れに蜂蜜をつけたものを用意して、試食してもらっています。かつて、ろうそくづくりに使われていたろうは、ミツバチの巣から取ったもの(ビーズワックス)でした。今回のろうも、ビーズワックスとパラフィンを混ぜて使っていました。

2時間の教室が終わり、跳ね回る子どもたちの後から外に出ると、もうとっぷりと日が暮れていました。心がほかほかと温かです。これは暖炉の火の効果ばかりではなさそうです。私たちは、普段の生活のなかで、自然にふれることをあまりにも忘れてしまっているのかもしれません。忙しいスケジュール に追い回されて、「次はこれをやらなきゃ!」と思いすぎているのかもしれません。自然とふれあってゆっくり過ごす時間を、生活に取り入れる大切さを感じました。ほんの少し、自然との時間を持つだけで、心が豊かになるように思います。みなさんの町の近くでも、自然とふれあえる機会がきっとあるでしょう。そんな機会を積極的に利用して、この冬ぜひ、心の温まるひとときを味わってみてください。


土佐 幸子(とさ・さちこ)
米国ロチェスター大学大学院修了。物理学博士。科学を通して「考える喜び」を伝えようと、1995年より米国ボストン科学博物館で子どものための科学教室講師を務める。日本の科学館、教育機関が実施するワークショップでも講師として活躍。ボストン在住。科学者、教育者であり、2児の母でもある。著書に『ライト兄弟はなぜ飛べたのか』(さ・え・ら書房)、訳書に『クォーク の魔法使い』(ロバート・ギルモア著、培風館)などがある。


マサチューセッツ・オーデュボン協会管轄ドラムリン ・ファーム野生保護地域
http://www.massaudubon.org/drumlin/
マサチューセッツ・オーデュボン協会
http://www.massaudubon.org/


英語版もあるのでぜひ読んでください。 http://www.kagakunavi.jp/topic/show/83


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